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サモン・サーヴァントの儀式の終わった日の夜、ルイズは眠ることが出来ずにいた。 目をつぶっても昼間に起きた出来事が頭の中を駆け巡る。気がついたら東の空から太陽が昇り始めている。 あの後使い魔が消えたことで最もショックを受けていたのは意外にもキュルケだった。 今まで見たことない素直さでルイズに謝ってきたのだ。正直どう反応すればいいか分からなかったので適当に流しておいたが。 ルイズが思いのほか冷静だったのは、自分の手元に召喚した奇妙な箱が残ってたからだ。 今はもう火は出てない。あの時の騒ぎで気づいたときにはもう消えていた。だが壊れたわけではないようだ。 たぶんこの箱から火を出せば再びあの使い魔は現れる。 そして再び私を襲うんだろう。向こうはこっちの事を主人と認識してないようだ。 「あ~もう。どうしよう」 思わずつぶやく。が、そういいながらも心の中ではひとつの覚悟を決めつつあった。 今まで誰よりも努力してきたつもりだが、それでも報われず魔法が成功したためしはない。 その自分が始めてほぼ成功したと言う事ができたのだ。後もう少し。 後はあの使い魔に私を主人と認めさせる。そしてどのメイジにも負けない信頼関係を作る…! (点火「する」。ではなく点火「した」なら使ってもいい!) ルイズの手の中で火が踊った。 また後ろに現れるのではないかと思って、あらかじめ背中に壁を付けておいた。 世の中には背中を見られたら死んでしまう奇病があるという話を意味もなく思い出す。 予定通りと言うべきかどうか、使い魔は今度は自分の前に現れた。 昼間と全く同じ格好の黒尽くめの亜人。そして。 「おまえ…『再点火』したな!」 第一声も全く同じ。 違うのはそれに立ち向かうようにして杖を握りしめるルイズ。 「ええ。『再点火』したわよ」 ドドドドドドドドドドドドドドド………… (やっぱり影だ……) さっきからその場をうろうろするだけの使い魔を見てルイズは確信する。 昼間の出会いのとき心に引っかかったいくつかの単語。 再点火、チャンス、選ばれるべき者、影。 キュルケはこの使い魔がルイズの影に触れた後で、ルイズが叫び始めたと言っていた。 今回はあらかじめ自分の影が壁に向かうようにロウソクを立てておく。 余計な影ができると困るのでカーテンは閉めておいた。 これらは自分の影を守る為の作戦だったのだが、別の事実も浮かび上がらせることになった。 (こいつ。さっきから影の部分しか歩いてない) 使い魔がさっきから歩いているのは、ロウソクの光によって出来た家具の影の部分だけだった。 ひとまず自分は安全地帯にいることを認識したルイズは、使い魔に話しかけてみる。 「あんた名前は?私の使い魔なんでしょ?」 使い魔は動きを止めこっちを見ると答えた。 「チャンスをやろう!お前には向かうべき二つの道がある!一つは生きて『選ばれるべき者』への道!」 (ど~しろっていうのよ) 全く会話にならない。こいつはもしかしてこれ以外の言葉を知らないのか?思わず嘆息してしまう。 ああ。サモン・サーヴァントはもうやり直しできないし、使い魔は話を聞かないし。つまりハサミ討ちの形になるな… …………だんだんむかっ腹がたってきたわ。なんで私だけ使い魔のためにいろいろ考えて寝不足にならないといけないの? 逆じゃあないのか?選ぶのは私で、寝不足になるのはこの使い魔のほうなんじゃないのか? ルイズは相変わらず演説を続ける使い魔に向かって足を踏み出した。 使い魔がルイズの影に触れたと思った瞬間、使い魔に肩を掴まれている状態になっている。 昼間の再現。だからルイズはあわてなかった。 「チャンスをや「うるさい!!!」」 また同じことをリピートしようとする使い魔に一喝する。 「意味わかんないこと言ってんじゃないの!アンタは私の使い魔なの!私がご主人さまなの!」 ルイズはその目をけっして使い魔から離さず睨み続ける。 使い魔の動きが止まる。そして。 「チャンスをやろう!お前には「だからもうそれは聞いた!!」」 使い魔の動きが再び止まる。 「チャン「うるさい!!!」」 両者の動きが再び止まった。相変わらず使い魔の感情を読み取ることはできない。 どれくらいその状態が続いたか分からない。ルイズにはそれこそ永遠のように感じた。だが睨みは効かせ続ける。 使い魔はしばらくするとルイズの肩からトンと押すように手を離した。 よろけて転びそうになる!と思ったのは一瞬で、気がつくと少し離れた場所に立っている。 (今のは『私の体』を掴んでたんじゃないのね) 息を落ち着かせながらそんなことを考える。 使い魔の方を見てみる。雰囲気が変わったとは思えないが、もう襲ってくる様子はないようだ。 「あんた名前は?」 答えは返ってこない。 またひとつ嘆息。 「じゃあもうここは譲歩して私から言うわ。ありがたく聞きなさい。私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 反応はない。 「あんたを選んだ者よ」 やっぱり反応はない。 どうやってこの使い魔と信頼関係を作る?というよりコミュニケーションを取る?……ルイズは頭を抱えた。そのとき。 「ブラック・サバス」 「え?」 とりあえず名前は知ることができた。いやブラック・サバスが名前なのか本当は分からないのだが この際細かいことは考えないでおく。とりあえず一歩進んだ。ここから少しずつ進めればいい。努力には慣れてる。 この使い魔は何ができるのか。とりあえず簡単な命令からやってみようと思った。 「洗濯とか分かる?コレ」 ルイズは洗濯物が入ったカゴをブラック・サバスに渡す。 使い魔はそれを受け取ると…………なんの躊躇もなく食べた。 え……ルイズはその行動にしばらく絶句してしまう。なにをやったこの使い魔は!? 「何やってんの!すぐ出しなさい!このバカ犬!」 もう信頼関係なんて言葉は頭から飛んでいた。ブラック・サバスは我関せずといった雰囲気でルイズを見下ろしている。 「どうしたのルイズ?」 鍵がかかってたはずのドアが開き、廊下からキュルケが入ってくる。 と、その瞬間ブラック・サバスの姿が消え去った! 「あ!」 思わずルイズは声をあげる。あわててキュルケの横を抜け廊下に出て左右を見渡す。 わずかにだが廊下の端を影の線が伸びている。 もしあれが影上でしか動けなくてもこの上を伝って行けば相当移動できるだろう。 さらに時間が立って影の範囲が大きくなればほとんど学校中を移動できるのでは? 「ちょっとルイズどうしたのよ」 後ろを見るとキュルケが不思議そうにこちらを見ている。その足元には赤くてでかいトカゲが。おい尻尾燃えてるぞ。 「ああ、この子が私の使い魔のフレイムよ。あのさ~、えーと、あんたの使い魔は……やっぱ」 キュルケが珍しく言葉を濁すように話している。どうも自分がルイズの使い魔を殺したと勘違いしているようだ。 最近珍しいキュルケばっか見るな。なんてルイズは思いながらも 「使い魔に逃げられた」などと言うことも出来ずに、ただ廊下の先を見つめていた。 汚れたエプロンなどを洗濯するために水汲み場へ向かうメイドが一人。シエスタである。 今日もいい天気だ。というかよすぎる。 シエスタは少しでも日の光から離れるため校舎の日影の部分を歩いていた。 しかし水汲み場まで残り数メートルは日影がない。それに水汲み場自体は影になるところが無く、日に照らされている。 それでも太陽の光を反射してキラキラと光る水汲み場を見ると、涼しい気持ちになる。 水汲み場へ歩いていく。回りには誰もいなくて、付いてくるのは自分の影だけ。 「お前にチャンスをやろう」 後ろから声が聞こえヒッと悲鳴をあげてしまう。あわてて後ろを振り向く。 そこには黒い帽子に黒いマント、人間とはとうてい思えない顔と体、そしてその右手にはなぜか洗濯かご。 見詰め合うこと数分。 「あの……何かようですか?」 根負けしたシエスタは、目の前の怪しさ爆発の存在に声をかけた。 15分後そこには2人並んで洗濯しているシエスタとブラック・サバスの姿が! 「私ここで使用人をやらさせてもらっています。シエスタと申します」 「…………」 「あ、この洗濯道具は自由に使っていただいてけっこうですよ」 「…………」 「そ、その格好暑くないですか?」 「…………」 「ウミネコだ。ありゃーカモメじゃねぇーぜ。ウミネコだ。どうやって見分けるか知ってるか?」 「…………」 (…………空気が重い。エコーズACT3ってレベルじゃねーぞ!) 横からの妙なプレッシャーに思わず泣きそうになる。 黙々と洗濯をする隣の亜人に、なにか他に話題はないかと頭を回転させる。 「あなたはどなたの使い魔なんですか?」 ……やはり返事はない。もう黙ってさっさとしあげてしまおう。そう思ったとき 「ルイズ」 驚いて横を見るが、使い魔は相変わらず手は動したままこっちを見ようとはしない。 「ルイズ……ミス・ヴァリエールの使い魔なんですね?」 シエスタは会話が繋がったことに驚き、思わず声が大きくなる。 すると急に辺りが暗くなる。何事かと上を見ると巨大なドラゴンが空を通過していく。 「すごいですね。あれも使い魔なんでしょうか。わたし龍は初めて見ました」 ひとり興奮しながらも隣のサバスに話し続ける。 しかし、横を見ると使い魔はいなかった。洗濯物とカゴも消えていた。 To Be Continued 。。。。?
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「宇宙の果てのどこかを彷徨う私のシモベよ… 神聖で美しく、そして究極の使い魔よッ 私は心より求め、訴えるわ!我が導きに…答えなさいッ!!」 激しい爆発と共に呼び出されたそれは、その場にいた誰も想像しなかった物だった。 岩、まずはそう見えた。しかしそれには顔があった。 まるで人間が生きたまま石に変えられたようなおぞましいオブジェ、それには生きる物全てを畏怖させるような気配が感じられる。 普段ルイズを嘲笑している者達も今は声一つあげていない。 何故自分は震えているのだ?『ゼロ』が召喚した不気味な岩を見ているだけなのに。 生物的本能による恐怖、という解答に彼らがたどり着くことはついになかった。 一方のルイズもまた不可解な感情に苦しんでいた。自分の呼び出した使い魔、下僕となるべき存在、そのはずなのに。 何故体が震えて動かないのだろう。何故こんなに絶望的な気分になるのだろう。 何故この塊を見ていると、生きたままヘビに飲み込まれるカエルの心境を考えてしまうのだろう。 その答えを考える猶予はルイズには与えられなかった。 誰一人声の出せない状況下、足のすくんだルイズの目の前でそれがゆっくりと動き出したからだ。 太陽すらも克服した究極の生物がハルケギニアの大地に解放された瞬間だった。 ハルケギニア西方に長い歴史を持つ王国があった!歴史ある国家故の伝統としきたりに支配されたこの文化! その名をトリスティン王国! そしてその中に『魔法』の能力で王国を支配する貴族がいた! 『魔法』は彼らに伝わる奇跡!真の支配者の力をもたらす! しかし!ある時その王国は忽然と歴史から姿を消す!無数の吸血鬼を残して! なぜなのか!どこへ行ったのか!謎の全てはあの『使い魔』にあった! この物語は異世界から召喚されたゼロの『使い魔』にまつわる人々の 数奇な運命を追う冒険……にはならなかった!残念ながら! 究極の使い魔 完
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「なあ、一つお願いしたいんだが…」 アルビオンに向かうために馬に跨ろうとするルイズにギーシュが問い掛ける。 「なによ」 「僕の使い魔を連れて行きたいんだけど」 「好きにしなさいよ」 ルイズは興味を失い、再度馬に跨ろうとする。 「わかったよ、おいで!僕のヴェルダンテ!」 ギーシュが使い魔の名前を叫ぶ。 ギーシュの数歩前の土が隆起し、大きなモグラが姿を現す。 大きさは直径60サント程度だろうか。 「なにこれ、ジャイアントモール?これがあんたの使い魔?」 ルイズが尋ねる。 「そうさ、ヴェルダンテと呼んでくれ!ああ、僕の可愛いヴェルダンテよ!僕とワルキューレとヴェルダンテの 心が一つになれば僕らの正義は100万パワーさ!」 「そう、じゃあ66万パワーで妥協しなさい」 「ど、どういう意味だね、それは。使い魔を連れて行っていいと言ったんじゃないのか?」 「そんな大きなの馬のどこに積むのよ」 「決まってるさ、こう見えても地中を掘る速度は馬にも負けないんだ」 ルイズはため息をつく。 「あんた、姫様の話聞いてなかったでしょ?私たちはアルビオンに行くのよ?これ以上なにか言うなら「ひと言」につき 一発殴るわよ。「何?」って聞き返しても殴る。クシャミしても殴るッ。動かなくても殴る。あとで意味もなくまた殴る」 「ちょっと待ってくれ、最後のはなんだ最後のは」 「問答無用よ」 ギーシュに華麗に左アッパーを決めたとき、なんと使い魔のヴェルダンテがワムウに襲い掛かった。 ワムウは一応手加減しつつも反射的に殴り飛ばし、地面にモグラが転がった。 「な、何をするだァーーッ!」 「それはこっちの台詞だ、急に飛び掛かるなら殴られても仕方が無いだろう」 「うーむ、昨日アンリエッタ姫から貰った指輪に反応したんだろうね、僕のヴェルダンテは優秀な使い魔だから宝石を…」 ルイズが右頬にフックを叩き込む。 「これ以上使い魔の自慢をやるようなら大好きな使い魔と寝ててもらうわよ、急いでるんだから」 ギーシュは頬を抑えながら立ち上がる。 「ルイズ、君なんか変わったなあ…それにしても君たち、僕と使い魔になにか恨みでもあるのかね?」 「ないけどあるわ、さあそろそろ行くわよ」 やっと一行が出かけようとしたとき、朝もやの中から一頭のグリフォンが飛来する。 「やれやれ…どうやら間に合ったようだな」 グリフォンに乗った長身の男は声を漏らす。 「誰だッ!」 それにワムウが襲い掛かろうとする。 「やめてワムウッ!その人は敵じゃないわ!」 「やあ、愛しのルイズ。君の一行なかなか屈強だね、少しビビってしまったよ」 長身の男は明るく笑いながら一行に声をかける。 「お忍びの任務であるゆえ、一部隊つけるわけにはいかない。そこで、姫殿下から僕が指名されたというわけさ」 「ワルドさま…」 ルイズが声を漏らす。 ワルドはルイズに近づき、抱き抱える。 そして、二人のほうを向く。 「自己紹介が遅れたな、魔法衛士団グリフォン隊隊長、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドだ、よろしく頼む」 ギーシュは肩書きを聞き、肩をわなわなとふるわせる。 「あ、あのグリフォン隊の隊長だって!? ワムウはギーシュに尋ねる。 「そんなにすごいのか」 「ああ、『背中に目がある』『心臓が核鉄だ』『血管にドーピングコンソメスープが流れている』だのなんだの 言われてるぜ、半分は冗談だろうがもう半分はそうでも言わないと説明できない精鋭部隊さ。そこの隊長だったなんて…」 ワムウは姫の護衛についていることから精鋭部隊であることは察していたが、実戦でもそこまで恐れられているとは 思っていなかった。 「お褒めの言葉ありがとう、同行する仲間であるし、君たちの自己紹介もお願いできるかな?」 「ギーシュ・ド・グラモンだ、系統は土、二つ名は『青銅』です」 「ワムウだ」 ワムウは低く呟く。 「ふむ、もしかしてあのグラモン元帥の親族かい?」 「ええ、末っ子です」 「なるほど、それは心強いな、僕のは風のスクウェア、二つ名は『閃光』、よろしく頼むよ。 そして、そこのワムウくんは……どうやらメイジではないようだが…」 ワムウが答える様子が微塵もないのを察したルイズが代わりに答える。 「私の使い魔です、ワルド様」 ワルドが感嘆の声を上げる。 「使い魔とは思わなかったな、さすが僕のルイズ、こんな屈強な使い魔を召還するなんて! さすが僕のルイズだ!それにしても、なんて頼りになりそうな一行なんだ、 僕も胸を借りるつもりで同行させて貰うよ。さあ諸君、ではそろそろ出発するぞ!」 ルイズはヴァルキリー、ワムウは巨馬、ギーシュはヘイ!ヤア!という馬(名前のセンスがないとルイズにバカにされた) ワルドはここまで乗ってきたグリフォンに再度跨り、一行はまずは港町、ラ・ロシェールへ駈けていった。 * * * ラ・ロシェールまでは早馬で2日ばかり。ルイズは特技である馬術を生かし、ワムウの巨馬はなぜかスタミナ切れ知らずだったため 数時間おきに休めばワルドのグリフォンにもそれほど離されなかったが、ギーシュの馬および本体はすでに疲れきっていた。 「最後に休んでからいったいどれだけ立っているんだ…ええい!彼らの馬は化け物か!」 「私の馬もいい馬だけど、それだけじゃないわ。私のは『技術』よ、馬術には未知の部分があるわ」 「だいたい、なんで君の使い魔の馬はあんなに大きいのになんで疲れないんだね! 馬力のある馬ほどすぐ疲れるはずなんだ……『エネルギー』使うからなあ…」 「歩幅も大きいんだから大して変わらないわよ」 「いや…おかしい…これは辻褄が合わないッ!これが現実ではないッ!ほら、誰もいないはずの谷だってのに明るいし…」 「ギーシュ、しっかりしなさい」 実際にその谷は明るくなっていた。崖の上から松明が投げ込まれ、無数の矢が飛んでくる。 「奇襲だぞ、君たち!」 ワルドが叫ぶ。 ギーシュに向かってくる矢をワルドの魔法が弾く。 「た、助かった…」 しかし、息をつく暇もなく、二の矢が飛んでくる。 今度はワムウが左手でデルフリンガーを抜き、ギーシュとルイズに飛ぶ矢を弾き、右手で自分に向かってくる矢をつかむ。 「やあ相棒、やっと俺の出番が…」 二の矢が終わると、デルフをしまい、矢をもったまま右手を後方にしならせ、矢を崖の上の敵に向かって射出する。 「MOOOOOOOO!!」 数本の矢がものすごい勢いでワムウの手から崖の上まで飛んでいき、数人の体を貫いた。 「ほお、やるね」 ワルドが驚く。 一行が次の攻撃に備えていたが、急に矢の弾幕が収まる。 「だ、弾幕薄いよー、な、なにやってんだ敵さんは」 ギーシュが震える歯で強がりを言う余裕があるのは次の攻撃が来なかったからである。 竜に乗った少女が崖の上の敵に向かって小型の竜巻を放つ。 もう一人の女性が武装解除を徹底したのち、崖から転がり落とすと竜はこちらに向かって降りてきた。 「シルフィード!」 ルイズが竜の名前を叫ぶ。 竜の上からタバサとキュルケが降りてくる。 「お待たせ」 こともなげに数人の武器を剥いだキュルケが降りてくる。 「お待たせじゃないわよ!何しにきたのよ!これはお忍びの任務なのよ!」 「お忍びだなんて言ってくれなきゃわかんないわよ」 肩をすくめるポーズをとる。 「とにかく、感謝しなさいよね。危ないところを救ってあげたんだから」 ケガで抵抗の出来ない兵士に対してギーシュがいつもの尊大な態度で尋問を始める。 「子爵、こいつらはただの物盗りのようです」 「ふむ、最近は盗賊の集団化も進んでいるらしいしな、懸賞金に興味は無いし急いでいるし放っておこう。 もうすぐラ・ロシェールだ、あそこで一泊して朝一番の便でアルビオンに向かおう」 そして、彼らはもう明かりが見えてきたラ・ロシェールに向かって駆け出した。 To be continued.
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心臓 作詞/つまだ あなたが静かに息を引き取るのならば 私の心臓もじきにとまることでしょう この脈一つ一つにあなたがいるのです 私も死ぬのは必然的なことです I need you. Ah... 愛 need you. Ah an... 呼吸を やめたら むなしく 悲しく I need you. Ah... 愛 need you. Ah an... どこから ともなく 生きてと 聞こえた 気がした あなたが静かに息を引き取ったあとも 私の心臓がとまることは無かった ああ この脈一つ一つにあなたが生きている? 私はためしに三秒息をとめます I need you. Ah... 愛 need you. Ah an... 呼吸を やめたら むなしく 悲しく I need you. Ah... 愛 need you. Ah an... どこから ともなく 生きてと 聞こえた 気がした あなたが死ぬとき私は死ぬ 私が死ぬときあなたは死ぬ 生きるってそういうことだと 愛すってそういうものだと それが心理 これが真理 そう知った今は I need you. Ah... 愛 need you. Ah an... 私は 生きて ああ あなたを 生かして I need you. Ah... 愛 need you. Ah an... か細い声なら もう聞こえはしない I need you. Ah... 愛 need you. Ah an... 私は 生きて ああ あなたを 生かして I need you. Ah... 愛 need you. Ah an... か細い声なら もう聞こえはしない I need you. Ah... 愛 need you. Ah an... Lalala... 音源 心臓.mid 心臓.mp3
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ヴァニラはどこに消えたのか? ルイズが壁の穴の前で思案に暮れている時 彼はまさにその穴を通り抜け外にいたッ 自らのスタンド、クリームの口内に潜り込みこの世界から姿を消す スタンドが小さくなったとはいえその口内に広がる亜空間の容量はヴァニラにすら判らないほど広大ッ 彼が潜り込む等造作もなかった 時折外を確認し、物を削って移動の痕跡を残さぬよう注意し やがて人気のない洗い場にたどり着いた 「どうすればいいのだ・・・・・」 とりあえずルイズの部屋からは抜け出したものの、エジプトに戻る方法も行く当てもないヴァニラはこの世界において完全に孤独ッ そもそもこの弱ったスタンドでは戻ったところで何の役に立つというのか 小さくなったクリームの口内から少々苦労しながら体を出し、腰を下ろそうとするが 「きゃっ!」 突然背後から上がった悲鳴と、それに続く何かの落ちる音に弾かれた様に振り返る 「誰だッ!」 クリームを飛ばそうと身構えるがそこにいたのは洗濯物を満載した籠を持った――正確には持っていた、メイド服の少女ッ どうやら何もないところから出てきたヴァニラに驚いたらしい 「も、もうしわけありません・・・・あの、ミス・ヴァリエールの使い魔になられた方ですよね?」 少女は恐る恐る問いかける 「・・・・・・・・・・そうだ」 しかしヴァニラは目に見えて不機嫌になり、少女は更に恐縮してしまった 「も、もうしわけありませんッ!」 体が折れてしまうんじゃないかと心配になるほどに少女は何度も何度も頭を下げ、その態度に流石のヴァニラも居た堪れなくなる 「もういい、頭を上げろ」 本当に申し訳なさそうに頭を下げる少女に仕方ないといった様子で声をかける 「はい、申し訳ありません・・・・ええと」 ようやく顔を上げた少女は困ったようにヴァニラの顔を見上げる 「ヴァニラ・アイスだ」 「あ、もうしわけありません」 ヴァニラが名前を告げると慌てたように頭を下げ 「ヴァニラ様ですね。私はここで貴族の皆様のお世話をしているシエスタと申します」 と、恭しく名乗り返した シエスタの態度はここへ来て傲慢な貴族しか見ていなかったヴァニラにとってとても好ましく思えた 「それでシエスタ、お前はここで何をしていたんだ?」 「あ、私は洗濯を・・・・」 シエスタはそう答えると今頃思い出したのか、慌てて落としてしまった籠を拾い上げる 「・・・・・・」 ヴァニラは無言で零れ落ちた洗濯物を拾い、籠に入れた 「え、あの、ありがとうございます」 再び少女は恐縮しもう一度恭しく頭を下げるがその弾みで洗濯物が幾つか零れ落ちた ヴァニラがまた拾い上げようと身を屈めると 「見つけたわよヴァニラッ!」 肩で息をしながらルイズと、その後ろから見るからにキザそうな金髪の少年が洗い場に駆け込んできた 「ミス・ヴァリエール、君の使い魔はなかなか手が早いようだね」 「うるさいわねギーシュ、もう見つけたんだから帰ってもいいわよ!」 ギーシュと呼ばれた少年はルイズの言葉にむっとしたようだが、これ以上面倒ごとに関わる気はないのか何もいわず帰っていった 「・・・・・」 しかしヴァニラはギーシュの台詞に些かむっとした様子、何か言おうとしたが 「ちょっとヴァニラ、どういうつもり?使い魔が逃げ出したなんて聞いたこともないわッ!」 わめき散らすルイズに阻まれ、それは叶わなかった 「うるさい、それよりもルイズ」 ヴァニラは面倒くさそうにそれを遮る 「大体・・・・何よ?」 平民如きに呼び捨てにされたのはムカついたが一先ずストップ、自分より遥かに背の高い使い魔の顔を見上げる 「お前如きに仕えるのは本意ではないが、使い魔とやらになってやろう」 スタンドも月までぶっ飛ぶこの衝撃ッ! ヴァニラが自分から使い魔になると言い出したッ!! (ここで癇癪を起こしたところでDIO様の元へ帰れるわけじゃない。ならばあの小娘の元で帰る方法を模索した方がましというものだ) 今一度冷静になり、己の身の振りを考えた結果だった 「は・・・・?あ、当たり前でしょ!アンタは私の使い魔でもう契約の・・・そのしたんだから!!」 契約に伴った行為を思い出し赤面するルイズ、そもそもヴァニラの知らないことだが サモンサーヴァントの儀式には使い魔に口付けをしなければならない 幸いにも『お前如き』といわれたのは耳に入らなかったようだ (DIO様、いつの日か必ずお傍へ参ります。どうかその時までご健在であられて下さい) こうして、ヴァニラの使い魔としての生活が始まった To Be Continued...
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「おい、起きな」 ガン!とルイズのベッドを蹴り飛ばす。しかしルイズは起きない。 ガン!もう一度、更に強く蹴り飛ばす。しかしルイズは目覚めない。 ドガン!更にもう一度、勢いをつけて蹴り飛ばす。しかしルイズは気付かない。 ベッドを蹴り飛ばしていた男の眼がスッと感情をなくす。 「クソガキ・・・このオレがわざわざ早起きまでして仕事をしてやってる ってェのによォォ~~」 ギアッチョの糸より細い堪忍袋の緒は音も立てずに切れた。 「ホワイト・アルバム」 ギアッチョがその言葉を口にした途端、ルイズの部屋は北極の海にでも 投げ込まれたかのように急激に冷え始めた。 ビシィッ! 窓が凍る。 ビシィィッ!壁が凍る。 ビシビシィッ!!絨毯が凍り、 ビキキキキッ!!シーツが凍り始めたところで、 「さ、さささ寒ッ!!?」 ルイズはようやく眼を覚ました。 「ようやくお目覚めかァ?お嬢様」 「なななななッ!何してんのよあんたはァーーーッ!!危うく二度と起きられ なくなるところだったじゃないッ!!」 「別にいいじゃあねーか そうなりゃ二度と早起きしなくて済むんだぜ それによォ これでおめーは『起きなきゃ殺される』って事が理解出来た わけだ 明日からはちゃんと目覚められるんじゃあねえか?ええおい」 ギアッチョの詭弁にもなっていない発言にルイズがブチキレかけた時―― バガンッ! ドアを開けたとは思えないような音を立ててキュルケが部屋に入ってきた。 「何やってるのよあなた達ッ!私の部屋まで凍り始めたわよッ!!」 「このお嬢様がいくら起こしても起きねェもんでよォォ~~ 手っ取り早く 起こす方法を取ったってェわけだ もう解除はしてある 安心しな」 勢いで飛び込んできたもののギアッチョは正直怖い。キュルケは怒りの 矛先をルイズに向けることにした。 「ああそう・・・それにしてもルイズあなた何歳よ?それとも睡眠に何か こだわりでもあるワケ?生死を賭けた状況になるまで起きないなんて そうそう出来ることじゃあないわよねぇ」 「うっ、うるさい!昨日は色々疲れてたのよ!」 昨日の礼を言うどころか罵倒で返してしまった。これだから私は、と ルイズは内心自分が情けなくなる。 「やれやれ、それじゃあ私は部屋に帰るわ。明日はこんなことになる 前に起きてよね」 そう言い残してキュルケは去って行った。 「ギアッチョ!あんたのせいよ!」ルイズはギアッチョをキッと睨む。 「あんたは今日から雑用だからね!まずは私の服を着替えさせてそれから ――、って!どこ行くのよッ!!」 ルイズが気付いた時にはギアッチョは既にどこかへ行ってしまった後だった。 「あのダサ眼鏡・・・どうやら使い魔としての自覚が足りないようね・・・! 私の従者としての立場を教育してやる必要があるわッ!!」 喉元過ぎればなんとやら。ギアッチョの呼び方があなたからあんたに戻って いることといい、どうやらルイズは昨日の恐怖をすっかり忘れ去って いるようだった。 あの後、結局ギアッチョは部屋に戻ってこなかった。ルイズの怒りは 収まらないようで、「せいぜい勝手に歩き回って朝食を食いっぱぐれれば いいんだわ!」と怒りもあらわに一人食堂に向かった。 食堂に入り、適当な場所を探していたルイズだが―― ドグシャアァ!! というおよそ食事をする場所では耳するはずのない音を聴いて振り返り。 そして奴を発見した。 ルイズ言うところのダサ眼鏡は―貴族専用の椅子にどっかりと鎮座し、 テーブルを殴りつけながらワケの分からないことを叫んでいた。 「テーブルマナーってよォォォ~~ イギリス式とフランス式で作法が 違うんだよォォォ~~~ スープの飲み方とかフォークの置き方とか よォーーーッ それって納得いくかァ~~?オイ? オレはぜーんぜん 納得いかねえ・・・ どういう事だッ!どういう事だよッ!クソッ!オレを ナメてんのかッ!一つに統一しろッ!ボケがッ!」 何度も殴られたテーブルは形が歪み始めたが、そんなことおかまいなしに ギアッチョは暴れ続けている。一方ルイズは、口の端を引きつらせたまま 完全に固まっていた。 数秒して我に返ったルイズが採った行動は、とにかくこの場から逃げる ことだった。「あいつが私の使い魔だってことがバレたら・・・!」と思うと ルイズの心臓は凍りつきそうだった。が、1秒後彼女の心臓は脆くも ブチ割れることになる。 「ああ~?ルイズじゃあねーか 遅ェぞご主人様よォォ~~!」 その瞬間食堂にある数十対の目が全てルイズに集まり―彼女は本気で 泣きたくなった。 「何やってんのよあんたはァーーーーーーッ!!!」 ルイズは激怒した。必ず、この横暴無比の使い魔を躾けねばならぬと決意 した。ルイズには裏社会の事がわからぬ。ルイズは、貴族のメイジである。 杖を振り、失敗を重ねて生きてきた。けれども無礼に対しては、人一倍に 敏感であった。 「見なさいよこれッ!テーブルがバキバキにヘコんじゃってるじゃないのよ! ああっ!?しかも貴族用の料理を平らげてる・・・食前の唱和すら始まって ないのに!!」 「ああ?何か悪かったかァ?こっちのルールはまだよく知らないもんでよォォ」 「このバカッ!周りを見なさいよ!誰一人食事をしてないのに待たなきゃ いけないってことがわからないの!?いやそれ以前にあんたの世界じゃ テーブルは殴り壊していいってルールでもあったわけ!?ええ!?」 物凄い剣幕である。しかも涙目。これにはギアッチョもちょっとだけ悪い事を した気分になった。 「そりゃあ悪かったな。ま・・・次からは気をつけるとするぜ」 しかしその余裕の態度が更にルイズの怒りを燃え上がらせる。 「・・・あんた 今から私の部屋を掃除してきなさい!それが終わったら 教室の掃除よ!授業が始まるまでにね!」 「ああ?」 「ご主人様には敬語を使いなさい!私が上!あんたは下よッ!!私の 事はルイズお嬢様と呼びなさい!そして常に私の後ろに控えていることッ! 良いわね!!」 そこまで言うと一瞬ギアッチョの眼が温度をなくしたように見えたが、ルイズ は負けじと睨み返した。 「・・・やれやれ 仕方ねえ・・・ 掃除をさせていただくぜェェ ルイズお嬢様 よォォー」 どうみても敬意はこもってなかったが、 「わ、解ればいいのよ!行きなさい!」 ルイズはとりあえず妥協することにした。なんだかんだでやっぱりギアッチョの 眼は怖かったようである。 前へ 戻る 次へ
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心臓、循環器を解剖-酸素や栄養分の供給を行う血液の循環を行う臓器。動脈、静脈、毛細血管が張り巡らされており4つの弁を持っています。 心臓模型 HS4.jpg OM-GP-2500.jpg G08.jpg 心臓模型 心臓模型 心臓模型 心臓解剖図 J9910PL.jpg J9915P.jpg J9915PL.jpg 心臓図 心臓図 心臓図 心臓医学書 TP003.jpg OR007.jpg TP007.jpg 心臓 血管 心臓診断 心臓 一般書 心臓が危ない 心臓病―狭心症・心筋梗塞・不整脈・その他の心疾患 (最新医学がとことんわかる) 心臓病は食生活で治す 医学専門書 心臓病の病態生理 心臓手術の周術期管理
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ヴェストリの広場は、魔法学院の敷地内、塔の間にある。要は中庭だ。 建物の影になって日が差さず、普段人はいない。 あの平民はぶちのめしたいが、あまり大事にはしたくない……というギーシュの微妙な配慮(彼も一応貴族だ)がここを選んだのである。 だが、それは全く無駄に終わったと考えていいだろう。 広場は噂を聞きつけた生徒たちで溢れかえっている。 「決闘だ!」 ギーシュが薔薇の造花を掲げた。歓声が巻き起こる。 「ギーシュが決闘するぞ!相手はルイズの平民だ!」 うおおおー! また歓声。 平民と貴族って、階級だと思ってたが、どうやら種族みてーだなあ。 すると目の前のモヤシ男は人間じゃねーのか? セッコは思った。 魔法=血統なのである意味間違ってはいない。 殺しちゃあダメとかルイズが言ってたな。 ということは「貴」族も死ぬって事だ。 なんとなくだが負ける気はしない。 決闘を前にしても特に何も感じなかった。不思議だ。 「では始めるか、僕はメイジだから魔法で戦うぞ。文句はあるまいね?」 ギーシュが薔薇の造花を振る。 花びらが舞って、女の銅像が現れた。動くのか? 「さっさとかかって来い、モヤシ男。」 まだ銅像の性能がわからねえ。こっちから行くのは危険だ。 「僕は[土]属性、青銅のギーシュだ!ちゃんと名前で呼べ平民!」 「青銅とギーシュ、どっちが本当の名前だぁ?」 「うるさい黙れ!行けワルキューレ!」 銅像が走ってやってくる。運動能力はそう高くねえらしい。 あまりヤバそうじゃねえし、まずはこれと戦ってみるか。 目の前まで来た銅像が殴りかかってきた。 腕を掴み地面に叩きつけるように投げる。意外と重い。 ん、突然軽く? ギーシュが何か叫んでいる。 「……この銅像欠陥品かぁ?」 「こ、こんな馬鹿な!」 ワルキューレの腕が、根元からもげた。 思ったとおりね、結構強いじゃない。 ルイズは自分の使い魔が無能ではないとわかって、少し嬉しくなった。 ――トリステイア魔法学院、学院長室―― ミスタ・コルベールは、泡を飛ばして、学院長老オスマンに説明していた。 ルイズが使い魔召喚で平民の男を呼び出したこと。その契約のルーン文字が気になったこと。 それを調べていたら…… 「始祖ブリミルの使い魔、[ガンダールヴ]に行き着いたというわけじゃね?」 「そうです!あのルーンは、伝説の使い魔[ガンダールヴ]のものと全く同じであります!」 「わかった、しかし慌てるんじゃあない。同じルーンを使う違う魔法だってあるじゃろうが。」 オスマン氏はあくまで冷静である。 「それもそうですな」 ドアがノックされた。 「誰じゃ?」 扉の向こうから、秘書ミス・ロングビルの声が聞こえてきた。 「私です、オールド・オスマン」 「なんじゃ?」 「ヴェストリの広場で、決闘をしている生徒がいて、大騒ぎになっています。」 「まったく、暇をもてあました貴族ほど性質の悪い生き物はおらんわい、で、馬鹿は誰だね?」 「一人は、ギーシュ・ド・グラモン。」 「あの、グラモンとこの馬鹿息子か。おおかた女の子の取り合いじゃろ、相手は誰じゃ?」 「生徒のメイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔です。」 オスマン氏とコルベールは顔を見合わせた。 「教師たちは、決闘を止めるために[眠りの鐘]の使用許可を求めております」 オスマン氏の目が、鷹のように鋭く光る。 「アホか。たかが子供のけんかを止めるのに、秘宝を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい」 「わかりました」 ミス・ロングビルが去っていく。 コルベールは唾を飲み込んで、オスマン氏を促した。 「オールド・オスマン」 「うむ」 オスマン氏が杖を振ると、壁にかかった大鏡に、ヴェストリ広場の様子が映し出された。 ギーシュは焦っていた。一体目のワルキューレはセッコに腕と頭をもぎ取られて機能停止している。 あいつは間違いなく戦闘経験豊富だ。けれど、メイジたる自分が平民相手に全力を出して問題になったりしないか? グラモン家の恥になったらどうしよう? 「くらえっ!」 足を狙って石礫を放つ。が、普通にかわされてしまう。 「[土]魔法ってのは全部こんな鈍いのか。」 もう仕方がない。負けるよりは全力で叩き潰す方がはるかにマシだ。 ありったけの精神力を込めて薔薇の杖を振る。 「ワルキューレぇっっ!!!」 魔法って大した事ねえなあ、それとも「土」だから? 確か赤土とかいう先生は土は日用品 つってたっけ? だが、こいつが単に弱い可能性も捨てきれねえ。知らないものは警戒するに限る。 さて、ギーシュをぶん殴ってオレに土下座させるかぁ。 「うおあ、なんだ?」 気づくと、さっきの銅像が7匹も現れている。 しかも武器を持ってやがる。こいつはやべえ。 どうせ鈍いんだろうが、もし当たったら死にそうだ、逃げるか? それもムカつくなあー。 ……なんか武器があればいいんじゃねえか? なぜ、その発想が生まれたのかは判らない。 何故ならセッコは武器を使ったことが一度もないからだ。 そうだ、この広場には石が敷かれている。この石で殴ったらどうだろう? 石は多分銅より硬いんじゃねえか? 少し出っ張った石に触れると左手の模様が光りだした。 この手触り、昔から知っている気がする。 思い切り石を掴む。模様が更に輝き、力が溢れてくる気がする。 ふと横を見ると、さっき壊した銅像が転がっていた。 何でオレは目の前にある銅像ではなく、わざわざ埋まっている石を選んだんだ? 今は闘いの最中だ、そんなことを考える暇はねえ。 左手の輝きに身を任せてみることにする。 「ねえ、タバサ、あの使い魔って人間だと思う?」 キュルケは隣の青髪の少女に声をかけた。 彼女には珍しく、本から目を離して戦いを見ている。 「わからない」 「タバサでもわからないか。」 「あんな能力の亜人は聞いた事も読んだ事もない」 「じゃあやっぱり人間なのかしらね?」 「わからない」 「そう。」 「ちょ、おま、おまえ一体?メイジなのか?」 どう見ても目の前の男は杖など持ってない。 しかし これは……そんな馬鹿な…… ルイズの使い魔が、足元に埋まっていた石を。 いや、岩だ! そいつは、直径1メイル以上はあろうかという岩を。 片手で地面から引きずり出した! しかも、僕の目が正しければ、岩の表面が溶けた様に何か滴っている。 「うわ うわああああああ!ワルキューレ!あいつを、あいつをぶっ殺せ!」 「不思議なんだよぉ、左手から力が湧いてくる、オメーを潰せってなあ!」 僕の 僕のワルキューレが、あいつの持った岩に端から潰されていく…… しかも、まるで素手で殴るように動きが速い。 これは平民ではない、何か別のモノだ、認めたくない。 「潰れて死ね」 僕に向かって 岩が 飛んで しぬ 「ギーシュさま!!!」 突然横から飛んで来た水流が僕を弾き飛ばした。一体誰が僕を助けたんだ? 岩は背後の塔にめり込んで砕けた。 「モ、モンモランシー?」 「ギーシュ、やめて!もう怒ってないから、もうちょっとで死ぬところだったのよ!!」 「僕は……」 「それはもういいから、あの使い魔に謝って!あれはギーシュが悪いわ!」 あいつが近づいてくる。やっぱり僕を…… 「……」 「その……セッコ・・だったかな?」 「オレの勝ちでいいか?」 「あ、ああ、僕が……悪かった……」 「わかった。」 「僕を許してくれるか?」 「オメーを殺したらルイズが怒る。」 さっきの岩は僕を殺す気じゃなかったのか? と言いたくなったが、また怒らせそうだし止しとこう。それに実際もう怒っているようには見えない。 「一つだけ言わせてくれないか?」 「何だ。」 「僕は青銅のギーシュだ。オメー じゃない。」 「わかった。オレはセッコだ。」 「確かにさっきの僕は貴族らしくなかった。すまない、セッコ。」 「わかった。」 「僕は貴族ギー……」 「わかったつってるだろおおおお!もう怒ってねえから黙れえ!」 悔しいがこいつにはもう逆らえないな……平民の癖に。 でも、モンモランシーの怒りが静まったのもこいつのおかげかもしれない。 そう考えるとまだ良かったかな。 コトッ 「ギーシュさま、この指輪はなに?」 「それはケティに・・・ハッ!」 「ギーシュさま……」 訂正しなくてはならない。今日はやっぱり厄日だ。 「ふむ……」 オスマン氏とコルベールは、「遠見の鏡」で一部始終を見終えると、顔を見合わせた。コルベールは震えながらオスマン氏の名前を呼んだ。 「オールド・オスマン」 「うむ」 「あの平民、勝ってしまいましたが……」 「うむ」 「ギーシュは一番レベルの低いドットメイジですが、それでもただの平民に遅れをとるとは思えません。 そしてあの動き!あんな平民見たことがない! やはり彼は[ガンダールヴ]!さっそく王室に報告しなければ!」 「なあ、コルベール君」 「なんでしょう、オールド・オスマン?」 「伝説のガンダールヴは、どんな特性の使い魔だったのかね?」 「主人の長い詠唱時間を守るため、時間稼ぎに特化した使い魔と聞きますが」 「うむ」 「あらゆる武器を達人のように使いこなしたそうです。」 「なあ、コルベール君。あの平民は武器を使っていたかね?」 「そういえば……」 「うむ」 「岩も武器といえばそう言えなくもないかもしれませんが」 「むしろ先住魔法の類かものう。」 「しかし、召喚時はディテクト・マジックに反応がありませんでした」 「まあ、しばらく様子を見てみるかの。無論クサレ王室には内密でな」 「そうですねえ……」 To be continued…… 戻る< 目次 続く
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心臓 心臓 アーティスト 藍井エイル 発売日 2022年10月19日 レーベル SACRA CDデイリー最高順位 3位(2022年10月23日) 週間最高順位 7位(2022年10月25日) 月間最高順位 14位(2022年10月) 年間最高順位 108位(2022年) 初動総合売上 7531 累計総合売上 11301 収録内容 曲名 タイアップ 視聴 1 心臓 ソードアート・オンライン-プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ 主題歌 2 EVIL 3 Dance with me CD/総合ランキング 週 月日 CDシングル 総合シングル 順位 週/月間枚数 累計枚数 順位 週/月間枚数 累計枚数 1 10/25 5 5428 5428 7 7531 7531 2 11/1 9 816 6244 12 1966 9497 2022年10月 11 6244 6244 14 9497 9497 3 11/8 17 426 6670 23 1185 10681 4 11/15 303 6973 303 10984 5 11/22 190 7163 190 11174 6 11/29 127 7290 127 11301 2022年11月 38 1046 7290 48 1805 11301 配信ランキング 心臓 週 月日 デジタルシングル 順位 週/月間DL数 累計DL数 1 10/25 9 5256 5256 2 11/1 15 2875 8131 2022年10月 15 8131 8131 3 11/8 1896 10027 劇場版ソードアート・オンライン 主題歌 前作星なき夜のアリア 冥き夕闇のスケルツォ 次作 往け 心臓藍井エイル 関連CD INNOCENCE 虹の音 IGNITE アイリス I will…